1on1は、受け取り手にもトレーニングが必要?話し手の力が試される。
- hi-perda
- 4月20日
- 読了時間: 5分
こんな方に読んでほしい!
◎静岡市近郊で営業中
◎従業員数51名以上
◎活気ある職場づくりを通して業績アップにつなげたい
◎ご年齢が30-50代の代表者様
◎離職率を下げたい
こんにちは。社会保険労務士の杉浦です。
「1on1ミーティング(ワンオンワン)」は、社員の成長や定着に有効な手段として、多くの企業で導入が進んでいます。特に、定着率の向上や離職防止を目的に、人事施策の一環として導入されている企業も増えてきました。
1on1ミーティングは、単なる進捗確認の場ではなく、「社員と上司が信頼関係を築き、社員の成長を後押しする場」として活用されることが理想とされています。
その中で重要な役割を果たしているのが「コーチング」です。上司が社員に対して問いかけを通じて気づきを引き出す、このコミュニケーションスタイルには確かな効果がある一方で、実は“受ける側”にもある程度の準備とトレーニングが必要ではないか。
最近はそんな風にも思うのです。

1on1に活用されるコーチングの基本要素
まず、1on1ミーティングでよく使われるコーチングの要素について、代表的なものを3つ紹介します。
① オープンクエスチョン(開かれた質問)
「はい・いいえ」では答えられないような問いかけを通じて、社員自身に考えさせる質問です。
例:「この半年間で一番達成感を得た仕事は何ですか?」
→答えに正解がないため、自分の考えや感情を言語化する力が求められます。
② 未来肯定的な質問
未来に向けた前向きな視点を持たせる質問です。
例:「1年後、あなたが今よりさらに活躍しているとしたら、どんな姿ですか?」
→ビジョンや目標を描く力を引き出すための問いかけです。反対語は「過去否定」です。「何でそんなことをしてしまったんですか?」というような質問です。
③ 傾聴・リフレクション
上司がしっかりと話を聴き、社員の発言を繰り返して返すことで、理解を深めたり、気づきを促します。
例:「つまり○○と感じたということですね?」と繰り返して確認するようなやり取り。
「いい質問」でも、受け手が答えられないことがある
コーチングの問いかけは、受け手の内面に踏み込むものが多いため、普段慣れていない人にとっては戸惑いや違和感を覚えることもあります。
例えば「1年後どうなっていたい?」と聞かれても、普段そういうことを考えていない社員にとっては、
「そんなこと聞かれても分からない」
「急に未来のことなんて…」
という反応になってしまうことが考えられます。
また、質問を受けること自体が「評価される」「試される」ように感じて、緊張して本音を言いづらくなってしまうこともあるでしょう。
コーチング練習は“分かっている人同士”で行われがち
コーチングの練習やロールプレイングは、多くの場合、ある程度コーチングを学んだ人同士で行います。そのため、受け手側も「こういう問いには、自分の内面を掘り下げて答えるものだ」と分かっています。
ところが、一般社員にはそのような前提知識はありません。突然「これからは1on1だ!」と言われても、何を話していいのか分からず、上司の質問に対して「正解」を探すような反応(何て答えて欲しいのかな?)になってしまいがちです。
これでは、本来の目的である「気づき」や「成長」を引き出すことはできません。
受け取り手側のトレーニングも必要かも
だからこそ、1on1ミーティングの効果を高めるには、受け手側にもある程度の準備とトレーニングが必要ではないかと考えます。
社員が1on1に慣れ、上司の問いかけの意図を理解できるようになることで、より深い対話が生まれ、関係性の質も高まります。
具体的には、以下のようなトレーニングが考えられます。
● 1on1の目的を明確に共有する
「なぜ1on1をやるのか」「どんなことを話す場なのか」を社員に説明し、評価ではなく対話であることをしっかり伝える。特に評価懸念(質問されたことに正しく答えられないとか、望んだ答えが提供できなかったということを恐れること)をなくすように心がける。
● 上司の質問意図を紹介する機会を作る
「こういう質問には、こんな意味がありますよ」という例を示し、社員が質問を正しく受け止められるようにする。
● 話す準備をしてもらう
「最近印象に残っている仕事は?」「今、困っていることはある?」など、事前に考えておける項目を共有することで、構えずに話せるようになる。 そもそも論として、日ごろの会話の量を増やすことで、1on1担当者の人となりを知っておいてもらう。
まとめ:1on1は、双方向の準備があってこそ成功する
✔ 上司がコーチング的に問いかけるスキルを身につけることも大事
✔ しかし、社員が受け止める用意・そして受け止める力を育てることも同じくらい大切
✔ そのためには、1on1の意義・進め方等を社員にも伝えることが必要
「こっちは頑張ってコーチしているのに、社員はいい反応をしてくれない…」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、それは社員にスキルや知識がないからではなく、“聞かれる”準備が整っていないだけかもしれません。
やりやすい・分かっている相手とだけ1on1をするのも、心地よいので手放しがたいですが、そうした技術を持たないような受け手とこそ、真剣になってやっていくことが、これからの1on1に求められているのではないでしょうか。
受け手が1on1の価値と向き合う、“トレーニングの機会”をつくっていくことが、これからの組織づくりに欠かせない視点です。1on1の真価を発揮できるような仕掛けづくりをしていきましょう。



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